カウンセリングなどコミュニケーションが重要視されている現場で、よく言葉に出てくるラポール形成

信頼関係といった意味合いで使われていることが多いのですが、実際の活用する場面を具体的にイメージするのは難しいのではないでしょうか?

 

今回は、実際にカウンセリングを行なっているカウンセラーに向けて、ラポール形成の意味から活用の流れについてご説明します。

ラポール形成とは

ラポール形成とは、意識をしなくても相手とふと心が通じ合ってしまう状態のことを言い、以前は「精神感応」と訳されていました。

友人であっても近しい人でなければ話せない悩みというものがありますよね?

なぜその人には深い悩みでも話せるのかというと、それは何を言っても受け入れてもらえるという安心感を持っているからです。

 

カウンセラーは、初対面で相談者であるクライエントにラポールが形成されている状態を感じてもらわなければいけません。

もしラポール形成に失敗したままカウンセリングを続けていると、一見クライエントの悩みを解決したような印象を受けても、クライエント自身にもなんとも言えないモヤモヤが残ってしまいます。

 

ラポール形成は、カウンセラーのもっとも基本的でもっとも重要なものと言えるでしょう。

ラポール形成に必要なマインド

ラポール形成で、カウンセラーがもっとも気をつけることは技術やスキルではなくマインドや心構えです。

どのような心構えかというと「人を一人の個人として見る心構え」です。

 

先ほど、深い悩みを話してもらうためには「何を言っても受け入れてくれる安心感を持ってもらう」ことが重要だと書きました。

クライエントが上記のような安心感を持つためには、唯一無二の個人として見ていると思ってもらうことが必要です。

実際は、クライエントとカウンセラーの関係ですが、クライエントがそのように感じた瞬間にラポール形成は失敗してしまいます。

 

まずは、相手を一人の人間として見ることです。

カウンセリングの世界では、「受容」という言葉で表現されていますが、クライエントとカウンセラーの立場を越えた「受容」ができている人は少ないのではないかと思っています。

 

ラポール形成に必要なマインドと、身につけるためにオススメの本は以下の記事も参考にしてみてください。

http://style-puchi.sakura.ne.jp/kip/counseling/rapport-formation/

ポジショニングでラポール形成をスムーズに!

ポジショニングとは、カウンセラーとクライアントという立場を明確にすることを言います。

カウンセラーには、初対面であってもクライエントに人には言えないような悩みの深い部分を話してもらわなければいけません。

最初に、カウンセリングを「する人」と「受ける人」という立場を明確にしておくことで、クライエントに話しやすい雰囲気を提供することができます。

 

カウンセリングを行う際に、クライアントと初めて対面するシーンをイメージしてください。

 

カウンセラー「はじめまして、カウンセラーの〇〇と申します。本日はよろしくお願いいたします。」
クライエント「はじめまして、〇〇です。よろしくお願いします。」

 

重要なのは、第一声はカウンセラーが発していることです。

最初の声かけをカウンセラーから行うことで、カウンセリングを「する人」と「受ける人」にポジショニングを設定することができます。

 

次に、カウンセラーからいくつか質問をします。

質問の内容はなんでも構いませんが、クライエントがYESと言いやすいものが良いでしょう。

 

カウンセラー「本日はどちらからお越しいただいたのですか?」
クライエント「〇〇から電車できました。」

 

カウンセラーからいくつか質問をすることで、「話を聴く側」のカウンセラーと「話をする側」のクライエントという立場を明確にすることができます。

ラポール形成の技術

カウンセリングを勉強し始めると「傾聴」という言葉が頻繁に出てきます。

相手の話に耳を傾けてじっくりと聴くことなのですが、その時に活用することでより信頼関係が深まる技術についてご紹介していきます。

 

ただし、こちらの技術は人間は自分と似ているものには親近感や安心感を持つという「類似性の法則」に則ったものです。

そのため、技術を不自然に活用するとラポールを形成するどころか、不信感を持たれてしまうので注意してください。

 

あくまで大事なことは「相手を一人の個人として見る」ということをお忘れなく。

ミラーリング

ミラーリングとは、仕草や表情、姿勢を鏡のようにクライエントに合わせていくことです。

細かく分けると、ミラーリングは視覚的に確認できる要素をクライエントに合わせていくこと、後に述べるページングは視覚的に確認できない要素をクライエントに合わせていくことを言います。

 

ミラーリングの具体例は以下のようになります。

  • クライエントがお茶を飲むタイミングで、カウンセラーもお茶を飲んだ
  • クライエントが楽しげな表情で話しだしたので、カウンセラーも楽しげな表情で話を聴いた
  • クライエントが前のめりになって話しだしたので、カウンセラーも前のめりになって話を聴いた
  • クライエントが瞬きをする回数が増えたので、カウンセラーも瞬きの回数を増やした

 

動作を相手に合わせていくことで、クライエントに自分と似た人物だと思ってもらう状態を作り出していくことができます。

ページング

ページングとは、話すスピードや声の大きさ・トーン、言葉のリズムをクライエントに合わせていくことです。

ミラーリングが目に見える情報のことを言うのに対して、ページングはスピード、トーンなどの目に見えない情報のことを言います。

 

ページングの具体例を見ていきましょう。

  • クライエントの話すスピードがゆっくりだったので、カウンセラーも話すスピードを遅くした
  • クライエントがヒソヒソ声で話し出したので、カウンセラーも声を小さくした
  • クライエントがハキハキと話し出したので、カウンセラーもリズムよく話し出した
  • クライエントが悲しげな声で話し出したので、カウンセラーも悲しげな声で応えた

 

話し方など目に見えない部分に注意を向ける必要があるため、ミラーリングよりも観察能力が求められます。

バックトラッキング

バックトラッキングとは、クライエントが話す言葉をオウムのようにそのまま繰り返していくことです。

 

頭の回転が早い人が、相手の言いたいことを先回りして話している光景を見たことがあると思います。

例えば、クライエントが「仕事が辛いんです」と話した時に、カウンセラーが「会社を辞めたいんですね」と意訳してしまうと、誤解を招く危険性もありますよね。

話を早く進めたい時には有効かもしれませんが、先回りされた側には「自分の話を聴いてもらえなかった」というモヤモヤ感が残ってしまいます。

 

バックトラッキングは、クライエントの話す言葉を違う言葉に変換せず、同じ言葉を繰り返すことが重要なのです。

具体例を以下に示しておきます。

  • クライエント「仕事を辞めたいです」
    →カウンセラー「仕事を辞めたいと思っているのですね」
  • クライエント「家族の会話がもうずっとありません」
    →カウンセラー「家族の会話がずっとないんですね」
  • クライエント「毎日が楽しくないんです」
    →カウンセラー「毎日が楽しくないんですね」

 

クライエントの発した言葉を誤解なく次に繋げるためには、クライエントと同じ言葉を繰り返すようにしましょう。

感覚セットを知ってラポールを深める

物事を説明するときに、人間は頭の中でイメージをしたものを色や形、音、匂いなどの様々な表現を駆使してわかりやすく説明しようとします。

実は、この説明をする時に頭の中にどのようなイメージをするかで、色や形で説明する視覚タイプ、音や擬音で説明する聴覚タイプ、匂いや肌触り、味で説明する身体感覚タイプの3つに分けることができるのです。

 

感覚セットは、あくまで癖のようなものです。

人間は五感すべてを使って物事を理解し表現しているので、その部分は勘違いしないでくださいね。

 

クライエントがどの感覚タイプの人間なのか理解することで、相手に心地良い表現ができるようになります。

視覚タイプ

視覚タイプは、物事をなどの視覚的な要素で説明することが多いタイプです。

リンゴについて説明してもらうと「赤くて丸い形をした果物です」と答えるでしょう。

 

他にも、視覚的な表現を使うことが多いのも視覚タイプの特徴です。

  • ビジョン見えない
  • 見通しが立たない
  • イメージ描いてほしい

視覚タイプの人には、図や絵など目に見える形で説明するとスムーズに理解してもらえます。

聴覚タイプ

聴覚タイプは、擬音など聴覚的な要素で説明することが多いタイプです。

リンゴについて説明してもらうと「かじった時にシャリッと音がする果物」といった表現をします。

 

他にも、擬音を使って表現したり、他人の話を元に過去を思い出すことが多いのも聴覚タイプの特徴です。

  • 床がドンドンと揺れた
  • たしか〇〇さんが、僕に任せると言ったので・・・
  • 話がに入ってきました

 

聴覚タイプの人には、筋道だった話をすることで理解してもらいやすくなります。

身体感覚タイプ

身体感覚タイプは、味覚や嗅覚、触覚などの要素を使って説明することが多いタイプです。

リンゴについて説明してもらうと「甘い味や匂いの果物、ザラザラした肌触りの果物」のような表現となります。

 

他には、身体感覚全体を使った言葉を使うことが多い傾向にあります。

  • 心が震えている
  • 一体感がある
  • すぐに実感できる

 

身体感覚タイプには、物事を味わいながらじっくりと進める傾向があるため、焦らずに1つ1つ丁寧にカウンセリングをすることが求められます。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回は、カウンセラーに向けて実際に使えるラポール形成をご紹介しました。

 

カウンセラーはたとえ初対面の人であっても、悩みの根本部分を引き出して行かなければいけません。

ラポール形成の技術はもちろん大事ですが、それに頼らずに「相手を個人としてみる」ことを忘れないようにしてくださいね。